「知る」の謙譲語は「存じる」「存じ上げる」?違いと例文・メールの使い方を徹底解説
「知る」の謙譲語は「存じる」と「存じ上げる」のどちらが正しいのでしょうか。ビジネスメールや取引先との会話では、知っている相手や情報の内容によって適切な表現が変わります。さらに、「承知しております」との違いや、「存じます」が「思います」という意味で使われるケースも理解しておきたいポイントです。
文化庁の文化審議会答申「敬語の指針」では、敬語を尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類に整理しています。この分類を踏まえると、単に丁寧な言葉を選ぶだけでなく、誰に敬意を示すのかという視点から「知る」の敬語を使い分けられます。2026年のビジネスシーンでも役立つ基本ルールを、メールや会話の具体例とともに解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:自分が情報を知っている場合は「存じております」、相手に敬意を示しながら人物を知っていると伝える場合は「存じ上げております」が基本です。
- 要点2:「承知しております」は情報や依頼の内容を理解していることを表し、「存じております」とは意味合いが異なります。
- 要点3:「知る」の尊敬語は「ご存じです」、否定形は対象に応じて「存じません」「存じ上げません」を使い分けます。
【結論】「知る」の謙譲語は「存じる」と「存じ上げる」をどう使い分ける?
「知る」の謙譲表現には「存じる」と「存じ上げる」があります。実務では、知っている対象が人物なのか、情報・事柄なのかを最初に確認すると、適切な言葉を選びやすくなります。
たとえば、取引先の担当者から製品の仕様を尋ねられた場合は「その仕様については存じております」、紹介された人物について話す場合は「以前から存じ上げております」と表現できます。
「存じております」は情報・事柄を知っている場合
「存じる」は「知る」や「思う」の謙譲表現です。「存じております」は、自分がある情報や事柄を知っていることを、相手に対して改まった形で伝える際に使います。
例文:
- 「ご案内いただいた日程については、すでに存じております」
- 「その製品の仕様については、以前から存じております」
- 「ご指摘の件については存じております。詳細を確認いたします」
なお、「存じる」は人についての知識を表す場合にも使われることがあります。人物に対する敬意を特に表したい場合には、「存じ上げる」を選ぶと自然です。
「存じ上げております」は人物を知っている場合
「存じ上げる」は、文化庁の「敬語の指針」で謙譲語Iに分類される表現です。知っている人物を敬意の対象として立てながら、自分がその人を知っていることを伝えます。
例文:
- 「〇〇様のお名前は以前から存じ上げております」
- 「ご紹介いただいた田中様のことは存じ上げております」
- 「先生のご活動については存じ上げております」
ただし、人物の名前を聞いたことがあるだけなのか、本人と面識があるのかは区別する必要があります。「お名前は存じ上げております」とすれば、名前を知っていることを伝えられますが、面識まであると断定する表現ではありません。

【意味と敬語の違い】「存じる」「存じ上げる」「承知しております」を比較
3つの表現は似ていますが、伝えている内容は同じではありません。特に「承知しております」は、「知っている」という事実だけでなく、事情を理解している、説明を受けている、依頼内容を把握しているといった意味合いで使われます。
文化庁の「敬語の指針」では、「存じる」を「知る・思う」に対応する謙譲語II(丁重語)、「存じ上げる」を「知る」に対応する謙譲語Iとして整理しています。この違いは、敬意を向ける対象を考えるうえで重要です。
「存じます」は「思います」という意味にもなる
「存じます」は「知っています」という意味だけでなく、「思います」「考えます」という意味でも使われます。たとえば「そのように存じます」は「そのように思います」、「難しいかと存じます」は「難しいと思います」という意味です。
ビジネスメールでは、意見や見解を柔らかく伝える際に使われます。ただし、単に事実を知っていることを示すなら「存じております」、自分の考えを述べるなら「存じます」と区別すると、意図が伝わりやすくなります。
「承知しております」は理解・把握していることを表す
「承知しております」は、事情や依頼内容などを理解し、把握していることを表します。たとえば、納期変更の連絡を受けた際の「納期変更の件、承知しております」は、変更内容を理解しているという意味です。
一方、「存じております」は、ある事柄を知っているという意味が中心です。情報を知っていることと、相手の説明や依頼を理解していることを区別すれば、表現の選択で迷いにくくなります。
【比較表】場面別にわかる「知る」の敬語の正しい選び方
メールや会話で迷ったときは、何を伝えたいのかを基準に選びましょう。以下の表は、ビジネスで使いやすい代表的な表現を整理したものです。
| 表現 | 主な意味・敬語の働き | 使用例 |
|---|---|---|
| 存じる | 「知る」「思う」の謙譲表現。知識や考えを丁重に伝える | 「その件は存じております」 |
| 存じます | 「知っています」または「思います」 | 「そのように存じます」 |
| 存じております | ある情報・事柄を知っている | 「変更の件は存じております」 |
| 存じ上げる | 人物を知っていることを、相手を立てて表す謙譲語I | 「〇〇様を存じ上げております」 |
| 存じ上げております | 人物を知っていることを丁重に伝える | 「以前からお名前を存じ上げております」 |
| 承知しております | 事情・依頼・説明などを理解し、把握している | 「ご依頼の件、承知しております」 |
| ご存じです | 相手が知っていることを表す尊敬表現 | 「こちらの制度をご存じですか」 |
| 存じません | 自分が事柄を知らないことを丁重に伝える | 「詳細については存じません」 |
| 存じ上げません | 人物を知らないことを丁重に伝える | 「その方については存じ上げません」 |
この表で押さえたいのは、「存じる」と「存じ上げる」の違いだけではありません。「存じております」は知識の有無を伝え、「承知しております」は内容を理解していることを伝えるという違いも重要です。

【実践例文】「知る」の謙譲語をビジネスメール・会話で使う方法
敬語は、形だけを整えても、相手との関係や伝えたい内容に合っていなければ不自然になります。ここでは、社外メールや電話、商談でそのまま応用できる例文を紹介します。
1.取引先に情報を知っていると伝える
例文:
「ご説明いただいた新サービスの概要については、すでに存じております。詳細な仕様について、改めて確認させていただけますでしょうか」
情報を知っていることを伝えながら、確認したい点を具体的に示す文章です。ただし、「存じております」と伝えるだけでは、内容を十分に理解していることまで保証するわけではありません。理解度に応じて後半の表現を調整しましょう。
2.紹介された人物について伝える
例文:
「ご紹介いただいた佐藤様のお名前は、以前から存じ上げております。今回お話しする機会をいただき、ありがとうございます」
「存じ上げております」は、人物を知っていることを丁重に伝える表現です。実際には名前を聞いたことがあるだけなら、「お名前は存じ上げております」と対象を限定すると、誤解を防げます。
3.相手の依頼や説明を理解したと伝える
例文:
「ご依頼の内容、承知しております。ご指定の期日までに対応いたします」
この場面では、「存じております」より「承知しております」が適しています。相手の依頼を把握していることと、今後の対応を明確に伝えられるためです。ただし、まだ内容を確認できていない場合は、理解したと断定せず「内容を確認のうえ、改めてご連絡いたします」とするのが適切です。
4.自分の意見を丁寧に述べる
例文:
「ご提案の方向性が適切かと存じます。実施時期については、関係部署と調整したうえで判断したいと考えております」
ここでの「存じます」は「思います」の意味です。意見を断定しすぎず、丁寧に伝える働きがあります。一方、責任の所在を明確にする必要がある場面では、曖昧な言い回しを避け、判断や方針を具体的に示すことも大切です。
5.電話や会話で相手に尋ねる
例文:
「こちらの制度をご存じでしょうか。概要をご存じでしたら、ご意見を伺えますと幸いです」
相手が知っているかを尋ねる場合は、尊敬表現の「ご存じ」を使います。自分が知っていると伝える場合の「存じております」と混同しないようにしましょう。
【誤用を防ぐ】「知る」の尊敬語・否定形と敬語の基本ルール
「知る」の敬語で特に注意したいのは、相手の行為や状態を表す尊敬語と、自分のことを丁重に伝える謙譲語を混同しないことです。また、否定形では、知らない対象が人物なのか、情報・事柄なのかを意識すると自然な文章になります。
「知る」の尊敬語は「ご存じです」
相手が知っているかを尋ねるときは、「ご存じですか」「ご存じでしょうか」と表現します。これは相手が知っている状態を敬意を込めて表す言い方です。
例文:
- 「こちらの変更点をご存じでしょうか」
- 「〇〇様は、今回の計画をご存じですか」
- 「すでにご存じのことと存じますが、念のためご案内いたします」
最後の例文では、「ご存じ」が相手の知識を表す尊敬表現、「存じます」が自分の考えを表す謙譲表現として使われています。同じ文の中でも、主語と意味に応じて敬語を使い分ける必要があります。
「知らない」の謙譲語は「存じません」「存じ上げません」
自分が知らないことを伝える場合は、事柄については「存じません」、人物については「存じ上げません」が一般的です。ただし、否定表現は相手に冷たい印象を与えることもあるため、場面に応じて前置きの言葉を添えましょう。
事柄についての例文:
「恐れ入りますが、その製品の詳細については存じません。担当部署に確認のうえ、ご回答いたします」
人物についての例文:
「申し訳ございませんが、その方については存じ上げておりません。お名前やご所属をお教えいただけますでしょうか」
「存じません」と「存じ上げません」は、どちらも否定表現ですが、人物を知らないと伝える場合には「存じ上げません」がよく使われます。また、「知らない」ことと「答えられない」ことは別です。情報を把握していない場合は「存じません」、回答そのものが難しい場合は「お答えいたしかねます」など、状況に応じて使い分けましょう。
「存じ上げております」を物や場所に使わない
「存じ上げる」は、知っている対象を敬意の対象として立てる表現です。そのため、物や場所、制度などについて「会議室の場所は存じ上げております」と言うと、不自然に聞こえることがあります。この場合は「会議室の場所は存じております」が適切です。
同様に、相手自身の知識について「部長は存じ上げていらっしゃいますか」と尋ねるのも避けましょう。相手が知っているかを尋ねるなら、「部長はご存じでしょうか」と表現します。
「存じております」と「承知しております」を混同しない
「その件は存じております」は、その件について知っていることを伝える表現です。一方、「その件は承知しております」は、事情や内容を理解し、把握していることを伝えます。
特に、相手から指示や依頼を受けた場合は「承知いたしました」「承知しております」が自然です。反対に、ある制度や製品について知識があることを伝えたい場合は、「存じております」が使いやすい表現です。
なお、「承知いたしました」は依頼を受けた際の返答として使いやすい表現です。「承知しております」は、すでに把握している状態を伝える表現なので、時制や会話の流れも意識しましょう。

【知る謙譲語】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「知る」の謙譲語は「存じる」と「存じ上げる」のどちらが正しいですか?
A1:どちらも正しい表現です。情報や事柄を知っている場合は「存じております」、人物を知っている場合は「存じ上げております」が一般的です。ただし、実際の使い分けは文脈や敬意を向ける対象によって変わります。
Q2:「存じます」と「存じております」は何が違いますか?
A2:「存じます」は「知っています」という意味のほか、「思います」という意味でも使われます。「存じております」は、すでに情報や事柄を知っている状態を表すのが基本です。「そのように存じます」は意見、「その件は存じております」は知識を表します。
Q3:「存じ上げております」は誰に対して使いますか?
A3:自分が知っている人物について、相手に丁重に伝えるときに使います。「〇〇様のお名前は以前から存じ上げております」のように表現できます。物や場所については「存じております」を使うのが一般的です。
Q4:「知る」の尊敬語は何ですか?
A4:「ご存じです」「ご存じでしょうか」などが代表的です。相手が知っている状態を敬意を込めて表す言い方であり、自分が知っていることを伝える「存じております」とは異なります。
Q5:「知らない」を丁寧に伝えるにはどうすればよいですか?
A5:事柄については「存じません」、人物については「存じ上げません」が一般的です。ビジネスメールでは「恐れ入りますが」「申し訳ございませんが」などを添え、必要に応じて「確認のうえ、ご回答いたします」と今後の対応を伝えると、より丁寧です。
まとめ:【プロの結論】敬語は「誰について、何を伝えるか」で選ぶ
「知る」の謙譲語を使い分ける際は、言葉の丁寧さだけで判断せず、知っている対象と伝えたい内容を整理することが大切です。
- 情報や事柄を知っている:存じております
- 人物を知っている:存じ上げております
- 相手の依頼や説明を理解している:承知しております
- 相手が知っているかを尋ねる:ご存じでしょうか
- 事柄を知らない:存じません
- 人物を知らない:存じ上げません
文化庁の「敬語の指針」が示すように、敬語には尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)などの異なる働きがあります。形だけを覚えるのではなく、誰の行為や状態を表し、誰に敬意を示すのかを理解すると、適切な表現を選びやすくなります。
ビジネスメールでは、敬語を重ねることよりも、相手に誤解なく伝わることが優先されます。「存じております」と「承知しております」の違いを押さえ、必要な情報を簡潔に伝えましょう。正確な敬語の使い分けは、相手への配慮を示すだけでなく、仕事上の認識違いやコミュニケーションの行き違いを防ぐことにもつながります。 (出典: 知る 謙譲 語(Yahoo!ニュース))